親権者と戸籍の問題(親権者にはなったけれども子供と戸籍が違う?)

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渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。

 

以前、「離婚すると子供と氏(姓)が違うことになる」問題について、その是正策(離婚しても子供と同じ氏にする方法)をご説明いたしました。 

 

しかし、それでも、実は、そのままですと「同じ氏(姓)なのだけれども、戸籍が違う」という問題がありうるのです。

 

この問題は、『結婚したときに氏(姓)を変えた方が、離婚して、子供と同じ氏(姓)にした場合』に生じます。

 

結婚により氏(姓)を変えた場合であれば、①婚姻中の氏(姓)を続用していても、あるいは②婚姻前の旧姓に戻していても、いずれであっても生じます。

 

 

1 このような問題が生じる理由(戸籍が別のものになるため)

 

②婚姻前の旧姓に戻す場合は、婚姻前の戸籍に戻るか、新戸籍になります(除籍されている場合、新戸籍の申出をした場合は、新戸籍になります。)ので、婚姻中の戸籍とは異なる戸籍になります。

 

そして、たとえ旧姓に戻ることになった母(父)が子供の親権者となっていても、離婚によって子供の戸籍が変動することはありません。

 

このため、②旧姓に戻る場合は,当然別戸籍になります。

 

他方で、①婚姻中の戸籍を続用される場合でも、婚姻により氏を変えた母(父)は、離婚により、婚姻中とは別の戸籍を新たに作ることになります。

 

同じ氏(姓)を名乗っていても、離婚しているのに同じ戸籍というのはおかしな話ですから、この扱い自体は当然と言えます。

 

ただし、両親が離婚しても、それによって子供の戸籍が変わることはありませんので、婚姻により氏を変えた母(父)が親権者となった場合、子と親権者が別戸籍ということになってしまうのです。

 

肝心の解決策ですが、①婚姻中の氏(姓)を続用する場合(子供の姓は変えない場合)と、②婚姻前の旧姓に戻していて子供の姓も旧姓にあわせて変える場合とで、いずれも同じです。

 

 

2 解決策(戸籍の編入)

 

家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立」をして、子供の氏を変更する許可を家庭裁判所からもらった上で、子供の所在地(住所地)又は本籍地の市区町村役場の戸籍係に届出をすることが解決策です。

 

ここで、、①婚姻中の氏(姓)を続用している場合、子供の氏(姓)は変わらないのだから、子の「子の氏の変更許可申立」をするというのはおかしな話と思われる方もいらっしゃるかと存じます。

 

しかし、①婚姻中の氏(姓)を続用する場合(子供の姓は変えない場合)であっても、実は、民法上は違う氏という扱いになるのです

 

たとえば、妻が婚姻により氏(姓)を変えていた田中さんご一家が離婚された場合、婚姻中は田中(夫)と田中(妻)は同一の氏でしたが、離婚により田中(妻)は別の新しい田中氏を作ったことになり、同じ田中でも田中(妻)は、従前とは別の田中氏という扱いになります。

 

他方で、両親が離婚しても、それによって子供の氏が変わることはありません。

 

この結果、子供は、たとえ田中(妻)が親権者になっても、そのまま何もしなければ、従前の田中(夫)の田中氏のままになってしまうのです。

そして、同一戸籍とするためには、氏が同じでなければならないという原則があります(戸籍法18条2項参照)。

 

このため、田中(妻)と子供の戸籍を同じ戸籍にするためには、田中(妻)が①婚姻中の氏(姓)を続用される場合でも、田中(妻)と同じ新しい田中氏へと子の氏を変更する手続きが必要となるのです。

 

なお、②婚姻前の旧姓に戻す場合、子供を同じ戸籍に入れるためには、同じ氏(姓)にしなければならないので、やはりこの「子の氏の変更許可申立」が必要となります。

 

 

3 具体的方法

 

「子の氏の変更許可」が必要ですので、まず最初に①この「子の氏の変更許可」をしてもらうように家庭裁判所に申立をします。

 

この申立の方法については、離婚をすると子供と氏(姓)が違うことになる?の「3 子供の氏(姓)が親権者のそれと同じになるように変更する方法」をご一読ください。

 

さて、許可が下りた場合、

 

②子供の所在地(住所地)又は子供の本籍地(従前の本籍地です)の市区町村役場の戸籍係に入籍届を提出します。

 

提出するのは、「子供」の所在地(住所地)又は本籍地の役所であり、今度入籍する先の親の所在地又は本籍地の役所ではない点に注意してください。

 

また、この入籍届を提出する際、先の「子の氏の変更許可」についての家庭裁判所の許可審判書の謄本が必要となりますので、ご注意ください。

 

なお、この他に、入籍届けを提出する市区町村が子や入籍先の親の本籍地とは異なる場合には、子や親の戸籍全部事項証明書の謄本が必要となります(詳しくは、弁護士又は、提出先の市区町村役場の戸籍係にお尋ねください。)。

 

 

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