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離婚した際の財産分与の方法(離婚したときに、財産をどのように分けるのか)

2016.03.29更新

当ブログにようこそ。

 

渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。


今回は、「離婚した際の財産の分与方法」について記載します。

離婚に際しては、「財産はいらないから(財産はあきらめているから)、とにかく離婚したい」という方も経験上少なくございません。

 

しかし、離婚後の生活を支えるものは財産ですし、これまで築いてきたものが財産という形になっているのですから、そうした方でも、実際にするしないは別として、少なくとも財産を分けることについてご検討はなさった方がよろしいかと存じます。

 

また、離婚に際して財産をどのように分けるかを気にされる方も多いかと思います。

 

そこで、離婚に際して財産を夫婦で分け合うことを財産分与というのですが、

 

今回は、この財産分与の方法について説明いたします。

 

 

第1 全ての財産が財産分与の対象となるわけではない(必ず全ての財産を分け合うものではありません)

 

まず、夫婦の財産には、①特有財産(夫婦のうちの一方が名実共に所有する財産のことです)、②共有財産(夫婦の共有になる財産)、③実質的共有財産(名義は夫婦の一方のものになっていますが、その実態は夫婦共有のもの)の3種類がございます。

 

このうち、①特有財産は、原則として、財産分与の対象にはなりません。

 

例外的な場合もありますが、基本的には、②共有財産、③実質的共有財産が財産分与の対象となります。

 

 

第2 (分与の対象外である)①特有財産であると評価される財産の範囲は狭い点にご注意ください

 

①特有財産である途評価されれば、それは財産分与の対象外とされますが、その①特有財産とはどのような財産のことをいうのかといえば、たとえば遺産がそれにあたります。

 

ところで、多くの方が誤解されていらっしゃいますが、この①特有財産とされる財産の範囲は、狭いです。

 

というのも、夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は共有財産と推定される(民法762条2項)上に、それぞれの名義の財産であっても婚姻中に得た財産は、多くの場合③実質的共有財産とされてしまうからです。

 

多くの場合において②実質的共有財産と評価される理由は、夫や妻がそれぞれの名義で得た財産(給料等)であっても、それは夫婦の互いの協力があったおかげで得た財産だから、実質的には共有財産であると裁判において評価されるからです。

 

このため、①特有財産になるのは、遺産のように、夫婦の協力のおかげで得た財産と評価することが困難な財産だけになるのです。

 

 

第3 分与の割合

 

上記のように、②共有財産(夫婦の共有になる財産)、③実質的共有財産(名義は夫婦の一方のものになっていますが、その実態は夫婦共有のもの)が、原則として財産分与の対象になるのですが、では、分与の割合はどのようになるのでしょうか?

 

実は、多くの場合、2分の1に分割されます(半分が相手のものになります。)。

 

離婚をお考えの方の中には、「自分の才覚で築いた財産であり、ここまで財産を大きくしたのは自分の才覚なのだから、相手に分与することはしたくない。」とお考えの方、

あるいは、そのようなことを相手から言われた方もいらっしゃると思います。

 

しかし、現実には、多くの場合、2分の1に分割されます。

 

この背景には、夫婦の互いの協力があったおかげで得た財産であり、その互いの貢献の程度は、異なることが明らかではないときは、相等しいものと評価するという考え方があると思われます(参考:平成8年2月の法制審議会による民法改正要綱の答申)。

 

このため、貢献の程度に違いがあることを立証できない場合(立証は難しい場合が多いです。)、2分の1の割合で分割されるのです。

 

 

第4 扶養的要素、慰謝料的要素のある財産分与の場合、上記とは話が違ってきます

 

これまでの話は、実は、夫婦が婚姻中に互いに協力して得た財産を、離婚に伴い分けること(清算)だけを目的とした財産分与の場合の話です。

 

しかし、財産分与には、様々な目的(要素)があり、このような清算目的(要素)だけではなく、財産分与により子供の養育費を支払うことをも目的とする場合(扶養的要素)、あるいは慰謝料の支払いをも目的としている場合(慰謝料的要素)があります。

 

ここで気をつけていただきたいのは、原則として、財産分与には、清算目的があり、扶養的要素、慰謝料的要素は付加的な要素(いわばオプション的要素)に過ぎず、それゆえ、清算目的だけの財産分与が許され、かつ、そのような清算目的だけの財産分与が多いことです。

 

それゆえ、今からお話しするのは、いわばオプション的要素である扶養的要素、慰謝料的要素が付加されている場合の話です。

 

上記のように、清算目的(要素)だけの財産分与の場合、対象は原則として②共有財産、③実質的共有財産であり、その分割割合も2分の1でしたが、

 

扶養目的(扶養的要素)や、慰謝料目的(慰謝料的要素)がある場合、財産分与の対象範囲も限定されませんし、また、割合も当然変わってきます。

 

ただし、あくまでそれは、扶養目的、慰謝料目的に必要な範囲で変化するものです。それゆえ、無限定には広がりません。

 

とはいえ、財産分与の際に、扶養(養育費)や、慰謝料を考慮することは、養育費や慰謝料について、分与額等によっては一括払いを可能とする、あるいは今後の養育費等の支払い額を軽減させる(財産分与の際に養育費等を考慮して分与したとしても、その分与の額が低ければ、当然養育費等の支払い義務を免れません。ただし、清算的要素を越えて支払った分については、既払い分として考慮はされます。他方で、十分な額を分与していたのであれば、支払い済みとなります。)等のメリットもございます。

 

それゆえ、財産分与の際には、養育費や慰謝料としてどれくらいの金額がかかるのか、あるいはどのくらいの金額が請求可能かを検討した上で、財産分与にこうした要素を入れる、入れるとしたらどの程度入れるのか、あるいは全く入れないかについてご検討なさるのもよろしいかと存じます。

 

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投稿者: 上野訓弘法律事務所

多額の借金があることを理由に、婚姻費用分担額、養育費をゼロにすることはできるか?

2016.03.09更新

多額の借金があることを理由に、婚姻費用分担額、養育費をゼロにすることは出来るか?

(相手に多額の借金がある場合に、婚姻費用分担額、養育費はゼロにされてしまうのか?)

 

当ブログにようこそ。

渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。

今回は、「多額の借金があることを理由に、婚姻費用分担額、養育費をゼロにすることは出来るか(多額の借金がある場合、ゼロになってしまうのか)?」について記載します。

離婚が問題となったとき夫(妻)に多額の借金がある場合、あるいは離婚後に夫(妻)に多額の借金ができてしまった場合ということがありえます。

こうした場合に、婚姻費用分担額、あるいは養育費をゼロにまでできる(ゼロになってしまう)のでしょうか?

 

 

1 多額の借金があることだけではゼロにすることは難しいです

まず、一般的に婚姻費用分担額、養育費をいくらにするのかは、夫と妻それぞれの収入(収入予想)を主たる判断要素として決めます。

収入以外にも、借金(債務)の支払い状況、さらにはその借金の原因等を検討し、総合的に判断されます。

ただし、現在、離婚等の調停、審判においては、「算定表」とよばれる裁判所が作成した表を用いて婚姻費用分担額等を決めています。

この「算定表」は、収入を基礎に婚姻費用分担額、養育費を決めるものですので、収入が主たる判断要素となり、判断に際して借金(債務)の支払い状況等の考慮の比重は、小さいものとなります。

このため、多額の借金があるとしても、ゼロにすること(ゼロになってしまう)までは難しいです。

 

 

2 結局は、収入との関係でご自身の生活が困難かどうかで決まります

より具体的に申しますと、まず、確かに、婚姻費用分担や養育費の支払いをした場合、支払いをする者(義務者といいます)の生活が全く出来ないほどであれば、ゼロになり得るのです。

しかしながら、ここでいう生活が出来ないというのは、相当生活が厳しい状況のことをいいます。

というのも、夫婦の間、あるいは子供に対する養育義務とは、自分に余裕のある範囲で援助する(生活扶助義務)ではなく、(分かち合うことで)自分と同程度の生活をさせる(生活保持義務)義務であるとされています。

この義務について、大阪高等裁判所の平成6年4月19日判決は、「いわば一椀の飯も分かち合うという性質のもの」と表現しています。

このように婚姻費用分担、養育費の支払い義務とは、金額がたとえ少額になろうとも、なしうる限り支払うべき義務なのです。

このため、幾分たりとも収入がある場合、多額の借金の返済のあるとしても、その幾分かの収入のうち、多少義務者の生活が厳しくなろうとも努力して捻出すべきものとされやすく、ゼロにまでなることは相当難しいです。

 

もっとも、多額の借金があることは、その場合に多額の借金に対する返済も必要となるのですから、当然、支払い額を減額する要因にはなります。

また、判断の際、その借金の金額のみならず、その性質(誰からなんのために借りたものか、返済を怠った場合の不利益の程度、返済の猶予が認められる見込み等)も考慮されます。

その上で、収入との関係で、いくらまで支払うことが可能かどうかを検討することになります。

事実、上記、大阪高等裁判所の平成6年4月19日判決(事件番号:平6(ラ)67号)では、夫が支払い義務を負っていた場合で、その夫は失業中で収入は失業保険のみで、家のローン等がほぼ全額残っているという状況で、(一審の神和歌山家庭裁判所はゼロとすることを認めましたが)大阪高等裁判所ではこの状況だけでゼロとすることは認めませんでした。

この大阪高等裁判所の判断は多岐にわたりますが、その中でも失業保険の中から幾分養育費を負担することが出来ないかどうか丁寧に検討する必要があることを示した、すなわち幾分か収入がある場合に、多額の借金があるからといって直ちにゼロにするという判断はしなかったことは今後の参考になる点です(もちろん、収入や借金の状況如何によってはゼロにする可能性はあり得ます。)。

 

 

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投稿者: 上野訓弘法律事務所

離婚した場合、私立中学、私立高校、私立大学へ進学した子供の学費を全額、養育費として請求できるのか?

2016.03.07更新

当ブログにようこそ。

渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。

離婚した場合、あるいは離婚も検討しつつ別居中の場合、現に子供を養育している相手に対して、子供の『養育費』を支払う義務が生じえます。

このため、たとえ養育の合意が出来なかったとしても、裁判所に対して調停、審判を申し立てることで誰がどの程度の金額の養育費を支払うべきかが決定されます。

ところで、私立中学、私立高校、私立大学へ子供が進学した場合、

その学費の全額が養育費として認められるのでしょうか?



1 養育費の分担の一般論

まず、一方が全額を負担するということは通常ありません。

原則として、それぞれの収入に応じて分担します。

ただし、収入だけで決めるものではありません。

たとえば、生活状況等も考慮します。

現在、一般には「算定表」と呼ばれる裁判所が作成した表に基づいてに、双方の収入を主要素として分担を決めています。

しかし、上記「算定表」では、公立中学、公立高校までしか考慮されておりません。

すなわち、私立中学、私立高校、私立大学へ子供が進学した場合については、別途考える必要があるのです。




2 私立中学、私立高校、私立大学へ子供が進学した場合の学費は、どのようにして分担させるのか?

 

(以下は若干専門的な話になります。)

まず、算定表が考慮していないといっても、現在の裁判実務において、算定表を全く使わないと言うことはありません。

算定表を基礎に考えた上で、算定表では考慮していない部分を追加して考えるのです。

具体的には、実際にかかる学費から算定表の考慮している学費(例:15歳以上ですと、年間額33万3844円。判例タイムズ1111号285ページ。)を控除した上で、

その残額をどのように分担させるかを考えます。

分担に際しては、それぞれの収入(収入予想)に応じて案分することが多いです。

 

 

3 私立中学、私立高校、私立大学へ行くことに自分が反対していたのに、その意向を無視して相手が子供を私立に進学させてしまった場合にまで、上記の収入に応じた養育の支払いが認められるのか?

 

父親(母親)の資力、社会的地位等から見て、父親(母親)に、費用負担を認めさせるのが相当であるといえる場合に養育費の負担が認められます。

具体的には、養育費を支払う者の資力、社会的地位(学歴等も含みます)から考えて、自身の子供にそのような高額な費用負担をしてまで私立学校での教育を受けさせることが相当と言える場合であれば、負担が認められます。

このため、たとえ反対していても、資力、社会的地位がある場合には、収入に応じた負担が認められやすくなります。

また、この判断に際してはさまざな要素が考慮されるため、私立学校に行く必要性(公立ではなく私立へ行く理由)や、高校、大学等の義務教育を終えた後の教育機関へ進学する理由も考慮されます。

このため、父親(母親)の学歴(高いほど認められやすくなります。)と共に、その子供にとっての進学理由も大切な要素となります。

 

なお、反対していたことが全く考慮されないわけではありません。同意のなかったことは、(資力、社会的地位程ではありませんが)考慮要素の1つとなるのです。

それゆえ、上記の場合とは逆に、資力等は乏しいけれど、私立学校等に進学することを、以前は承諾していた(同意していた)という事情がある場合、

こうした同意があったことが重視され、費用負担は認められやすくなります。

 

(参考審判例)神戸家庭裁判所:平成元年11月14日の審判

「子は親に対し教育を受けさせること、或いはその方法等につき特定の請求をする法律上の権利はこれを有しないと解するのが相当である」とした上で、「本件のように父母が離婚している場合に、親権者である母が未成年者に高等学校、或いは大学等義務教育を越える教育をうけさせることを、費用負担者である父親に相談することなく一方的に決め、その費用を父親に請求することは当然には認められず、ただ、父親の資力、社会的地位等からみて、父親において未成年者のため義務教育を越える教育費を負担することが相当と認められる場合においてのみ、親権者である母はその費用を父親に対し請求し得る」としました。




 
 
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親権者と戸籍の問題(親権者にはなったけれども子供と戸籍が違う?)

2015.11.26更新

当ブログにようこそ。

 

渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。

 

以前、「離婚すると子供と氏(姓)が違うことになる」問題について、その是正策(離婚しても子供と同じ氏にする方法)をご説明いたしました。 

 

しかし、それでも、実は、そのままですと「同じ氏(姓)なのだけれども、戸籍が違う」という問題がありうるのです。

 

この問題は、『結婚したときに氏(姓)を変えた方が、離婚して、子供と同じ氏(姓)にした場合』に生じます。

 

結婚により氏(姓)を変えた場合であれば、①婚姻中の氏(姓)を続用していても、あるいは②婚姻前の旧姓に戻していても、いずれであっても生じます。

 

 

1 このような問題が生じる理由(戸籍が別のものになるため)

 

②婚姻前の旧姓に戻す場合は、婚姻前の戸籍に戻るか、新戸籍になります(除籍されている場合、新戸籍の申出をした場合は、新戸籍になります。)ので、婚姻中の戸籍とは異なる戸籍になります。

 

 そして、たとえ旧姓に戻ることになった母(父)が子供の親権者となっていても、離婚によって子供の戸籍が変動することはありません。

 

 このため、②旧姓に戻る場合は,当然別戸籍になります。

 

 他方で、①婚姻中の戸籍を続用される場合でも、婚姻により氏を変えた母(父)は、離婚により、婚姻中とは別の戸籍を新たに作ることになります。

 

 同じ氏(姓)を名乗っていても、離婚しているのに同じ戸籍というのはおかしな話ですから、この扱い自体は当然と言えます。

 

 ただし、両親が離婚しても、それによって子供の戸籍が変わることはありませんので、婚姻により氏を変えた母(父)が親権者となった場合、子と親権者が別戸籍ということになってしまうのです。

 

 肝心の解決策ですが、①婚姻中の氏(姓)を続用する場合(子供の姓は変えない場合)と、②婚姻前の旧姓に戻していて子供の姓も旧姓にあわせて変える場合とで、いずれも同じです。

 

 

2 解決策(戸籍の編入)

 

 家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立」をして、子供の氏を変更する許可を家庭裁判所からもらった上で、子供の所在地(住所地)又は本籍地の市区町村役場の戸籍係に届出をすることが解決策です。

 

 ここで、、①婚姻中の氏(姓)を続用している場合、子供の氏(姓)は変わらないのだから、子の「子の氏の変更許可申立」をするというのはおかしな話と思われる方もいらっしゃるかと存じます。

 

 しかし、①婚姻中の氏(姓)を続用する場合(子供の姓は変えない場合)であっても、実は、民法上は違う氏という扱いになるのです。

 

 たとえば、妻が婚姻により氏(姓)を変えていた田中さんご一家が離婚された場合、婚姻中は田中(夫)と田中(妻)は同一の氏でしたが、離婚により田中(妻)は別の新しい田中氏を作ったことになり、同じ田中でも田中(妻)は、従前とは別の田中氏という扱いになります。

 

 他方で、両親が離婚しても、それによって子供の氏が変わることはありません。

 

 この結果、子供は、たとえ田中(妻)が親権者になっても、そのまま何もしなければ、従前の田中(夫)の田中氏のままになってしまうのです。

 

 そして、同一戸籍とするためには、氏が同じでなければならないという原則があります(戸籍法18条2項参照)。

 

 このため、田中(妻)と子供の戸籍を同じ戸籍にするためには、田中(妻)が①婚姻中の氏(姓)を続用される場合でも、田中(妻)と同じ新しい田中氏へと子の氏を変更する手続きが必要となるのです。

 

 なお、②婚姻前の旧姓に戻す場合、子供を同じ戸籍に入れるためには、同じ氏(姓)にしなければならないので、やはりこの「子の氏の変更許可申立」が必要となります。

 

 

3 具体的方法

 

 「子の氏の変更許可」が必要ですので、まず最初に①この「子の氏の変更許可」をしてもらうように家庭裁判所に申立をします。

 

 この申立の方法については、離婚をすると子供と氏(姓)が違うことになる?の「3 子供の氏(姓)が親権者のそれと同じになるように変更する方法」をご一読ください。

 

 さて、許可が下りた場合、

 

 ②子供の所在地(住所地)又は子供の本籍地(従前の本籍地です)の市区町村役場の戸籍係に入籍届を提出します。

 

 提出するのは、「子供」の所在地(住所地)又は本籍地の役所であり、今度入籍する先の親の所在地又は本籍地の役所ではない点に注意してください。

 

 また、この入籍届を提出する際、先の「子の氏の変更許可」についての家庭裁判所の許可審判書の謄本が必要となりますので、ご注意ください。

 

 なお、この他に、入籍届けを提出する市区町村が子や入籍先の親の本籍地とは異なる場合には、子や親の戸籍全部事項証明書の謄本が必要となります(詳しくは、弁護士又は、提出先の市区町村役場の戸籍係にお尋ねください。)。

 

 

 

 

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投稿者: 上野訓弘法律事務所

離婚すると子供と氏(姓)が違うことになる?

2015.11.10更新

当ブログにようこそ。

 

渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。

 

今回は、「離婚すると子供と氏(姓)が違うことになってしまう?」という問題について記載いたします。

 

 

1 特に何もしなければ、子供と氏(姓)が違うことになりえます

 

まず、離婚した場合、そのまま何もしなければ子供と氏(姓)が違うことになりえます。

 

というのも、まず、離婚した場合、特別な手続をしない限り、離婚した両親は、それぞれ婚姻前の氏に戻ります。

 

他方で、子供の氏(姓)は、離婚によっても、変わりません。

 

親権者となるのが母親で、その母親が離婚により氏が変わった(旧姓に戻った)としても、特別な手続をしない限り、子供は以前の氏(姓)のままです。

 

女性が婚姻により氏を変え、離婚後は女性が親権者になることが多い現状ですと、特に何もしなれば、親権者になった母親と子供の氏(姓)が違う結果になることが多いです。

 

もちろん、このままでも構わないという方もいらっしゃるでしょう。

 

ただ、「親と氏(姓)が違うことで子供が辛い思いをするかもしれない。」と心配される方が多いのもまた事実です。

 

そうした方の場合、子供と親(親権者)の氏(姓)

子供の氏(姓)か、あなたの氏(姓)を変更する手続をする必要があります。

 

具体的には、①親権者の氏(姓)を婚姻前の氏(旧姓)に戻さず、婚姻中の氏(姓)を続用するか、

 

②子供の氏(姓)を親権者と同じになるように変更します。

 

 

 

 2 ①親権者の氏(姓)を婚姻前の氏(旧姓)に戻さない方法(婚姻中の氏、姓を続用する方法)

 

離婚の日から3か月以内に、本籍地又は所在地(住所地)の市区町村の役場に届出(戸籍法25条1項、4条)をすることで、続用できます(民法767条2項、771条)。

 

離婚届も市区町村役場なので、離婚届と同時にこの婚姻中の氏(姓)の続用の届出をすることも出来ます。

 

一般の場合であれば、氏の変更をする場合には、家庭裁判所の許可が必要で、この許可を得るには氏の変更を必要とする「やむを得ない事由」(戸籍法107条1項)が必要となります。

 

それゆえ、一般の場合であれば、家庭裁判所に氏の変更許可を求める審判を請求し、「やむを得ない事由」があることを主張、立証しなければなりません(家事事件手続法39条、別表第1の122項)。

 

しかし、離婚の日(離婚届提出日)から3か月以内であれば、家庭裁判所の許可も、またそもそも変更を必要とする「やむを得ない事由」も必要とせず、単に、本籍地又はお住まいの市区町村役場に届出をするだけで婚姻中の氏、姓の続用が可能です(つまり、家裁の許可も、「やむを得ない事由」も不要です。)。

 

言い方を変えますと、離婚の日(離婚届提出日)3か月を過ぎてしまいますと、婚姻中の氏、姓を続用したいと思われても、氏の変更を必要とする「やむを得ない事由」と、家庭裁判所の(審判による)許可が必要となるのです。

 

このため、婚姻中の氏、姓を続用されるのであれば、離婚の日(離婚届提出日)から3か月以内に、届出をなさってください。

 

ただし、せっかく子供と同じ氏(姓)にしても、戸籍は別々という問題が生じ得ます。

 

この点(どういう場合に戸籍が別々になるのかと、それを是正して一緒の戸籍にする方法)については、「親権者と戸籍の問題(親権者にはなったけれども子供と戸籍が違う?)」で記載いたしております。

 

 

3 ②子供の氏(姓)が親権者のそれと同じになるように変更する方法

 

子供の氏(姓)を親権者のそれと同じになるように変更したい場合、変更につき家庭裁判所の許可を得た上で、本籍地又は所在地の市区町村役場に届出をすることが必要(民法791条1項、戸籍法25条1項、4条)となります。

 

このため、まずは、家庭裁判所に対して、子供の氏(姓)を変更することの許可を得るために審判を申し立てる必要があります(家事事件手続法39条、別表第1の60項)。

 

ただし、この「許可」については、先に述べました一般の氏(姓)の変更許可の場合とは違い、氏の変更を必要とする「やむを得ない事由」までは必要とされていません(民法791条1項)。

 

このため、親権者の氏(姓)と子供の氏(姓)とを同じにすることが、子供の福祉にかなうかどうかという観点から許可すべきかどうかを緩やかに判断します。

 

 

 

ところで、この審判の申立ですが、子供が15歳以上の時は子供自身で、

 

子供が15歳未満の時は、法定代理人(親権者)が申立をします(791条1項、3項)。

 

弁護士に委託される場合であれば、子供の氏(姓)の変更を許可すべき事情(事由)の主張、立証と共にこうした申立人の名義の処理についても適切に対処しますが、ご本人でなさる場合には、こうした細かい点についてもご留意ください。

 

そして、家庭裁判所の許可を得た後、本籍地又は所在地の市区町村役場に届出をすることで子供の氏(姓)の変更は完成です。

 

家庭裁判所の許可を得ても、入籍届出をしなければ変更の効果は生じないので、入籍の届出を忘れないでください。

 

入籍届けの具体的方法については、、「親権者と戸籍の問題(親権者にはなったけれども子供と戸籍が違う?)」の「3 具体的方法」をご参考ください。

 

 

 

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投稿者: 上野訓弘法律事務所

子供の親権者には誰がなる? 

2015.10.30更新

当ブログにようこそ。


渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。

今回は、「子供の親権」について記載します。

 

離婚をお考えの方で、「自分のことはともかく、離婚した後の子供のことが心配」、

 

ついては、「自分が親権者になりたい」

 

でも、「子供の親権者になれるのだろうか?、どうやったら親権者になれるのか?」といった心配をなさっている方もいらっしゃると思います。

 

今回は、こうしたお悩みのうち、子供の親権者はどのな基準で選ばれるのか(子供の親権者には、父親(夫)と母親(妻)のどちらがなるのか)について、記載します。

 

 

 

1 離婚の際に親権者を決める判断基準

 

まず、そもそも親権者は話し合いでも決められるので、話し合いで合意できれば、それで親権者は決まります。

 

当然ながら、ここに基準はありません。

 

しかし、話し合いで決まらなければ、以下のような基準に沿って、親権者が決められます。

 

具体的には、

 

子供の現在にいたるまでの養育状況、子の意思、年齢、性別、兄弟姉妹関係、発育の状況といった子の状況、

 

並びに、

 

親の養育能力、養育に掛ける愛情、これまでの実績、今後の継続可能性、心身の健康、居住環境、経済力、さらには養育補助者の存在、その程度といった親の養育状況を

 

総合的に考慮して決めます。

 

 

この際、考慮すべきは、あくまでの子の福祉なので、離婚における有責性は、必ずしも考慮されません

 

(有責とされた内容が、子の養育にとって支障があるとするかぎりで問題となります。例:DVによる離婚)。

 

 

そして、一般に、乳幼児については、母親を優先します。

 

 

 

2 離婚の際、乳幼児について、父親は絶対に親権者になれないのか?

 

上記のように、乳幼児については、母親が優先されるので、多くの場合、父親は親権者にはなれません。

 

しかし、全くなれないものではございません。

 

母親に較べて父親の方が子の養育に適していると判断されるための要素を積み上げ(特に、養育実績が重要です)、

 

同時に、母親に子の養育に適していないという要素が散見される場合には、乳幼児でも父親が親権者になり得ます。

 

言い方を変えれば、母親に子の養育に適していないと要素が散見される場合であれば、(父親が養育に適した要素をどれだけ積み上げられるかにもよりますが)、

 

母親でも、乳幼児の親権者になれない可能性があるということです。

 

 

実際、広島高等裁判所の平成19年1月22日判決(事件番号:平成18年(ラ)180号)では、

 

2~3歳の2人の子供の養育について、

 

父親、母親双方とも、適性を欠くとまではいえず、

 

また双方とも2~3歳の2人の子供が安定して生活するに足りる住居や保育所などの環境を整えているとしつつも、

 

本件は母親が昼間も夜も働いていて保育所に預けることにならざるを得ない事案だったのですが、母親は結婚を巡る事情のために自分の両親(特に父親と)折り合いが悪くなってしまっていたので実家の協力が得られなくなっていたことなどがあり(母親は、その面は友人の助力で補うとは主張していたもののそれでは具体性に欠けると裁判所からは判断されています)、

 

子供達の監護を全うするのは困難と評価され、人的養育環境において父親に劣るとされ、父親の下で子の養育をするのが適切とされました。

 

なお、乳幼児には母親が重要という点については、「父親の母(子供達にとっては父方の祖母)によって母性的な監護もなされているのであるから、上記の判断を覆すほどに重視すべきものではない。」旨の判断がされました。

 

この裁判例については、

 

「母親が昼夜働かなくてはいけなかったのはなぜなのか」、

 

「『祖母でも母性的な監護はある』というが、それは母親の監護の欠如を補えるほどのものなのか」等の批判は考え得るところではございますが、

 

この判断が平成19年とそれほど古いものではないこと、高等裁判所の判断であることから、

 

離婚の際の親権の帰属問題を考えるにあたり、検討すべき裁判例と思い、今回ご紹介させていだだきました。

 

 

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養育費をもらったら税金はかかる?(一括でもらう場合、月払いでもらう場合の贈与税)

2015.09.28更新

当ブログにようこそ。


渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。

今回は、「養育費にかかる贈与税」について記載します。

 

離婚に際して、子供の養育費を定めることは多いと思います。

 

その際、養育費を月々ごとに月払いでもらうことにしている方が多いのではないでしょうか。

 

他方で、今後、継続的に支払いをしてくれるかどうか不安のため、一括でもらってしまうという方もいらっしゃるかと思います。

 

こららの場合においては、贈与税がかかることがあります。

 

では、どのような場合に贈与税がかかるのかについて、記載します。

 

 

1 月払いでもらう場合、原則として、贈与税はかかりません

 

まず、生活費や教育費として通常必要になる範囲の金額を、必要になる都度、直接これらの用に充てるために(実際に養育費に使うために)元配偶者(離婚した夫や妻)からもらっていた場合、それに対して贈与税はかかりません(相続税法21条の3第1項2号、相続税基本通達21の3-5)。

 

月払いでもらっている場合、「必要になる都度」「直接これらの用に充てるために」もらっていることになるので、原則として贈与税はかかりません。

 

ただし、あくまで贈与税がかからないのは、生活費や教育費として「通常必要になる」範囲の金額です。

 

そして「通常必要となる」範囲内かどうかは、子供の状況や、ご両親の資力その他一切の事情(ご両親の学歴など)を勘考して、社会通念上適当と認められる範囲内かどうかで決まります(相続税基本通達21の3-6)。

 

このため、個々の事情により決まりますので、ここで一概にどの程度の金額であればその範囲内に納まるとは言えません。

 

いずれにせよ確かなのは、この通常必要となる範囲内の金額になるのであれば、月払いの場合は贈与税がかからないことです。

 

ただし、通常必要となる範囲内の金額であっても、生活費や教育費の名義で取得した財産を預貯金した場合、株式の買入、家屋の買入代金に充当した場合には、通常必要と認められず、贈与税の対象とされてしまうので、気をつけてください(相続税基本通達21の3-5)。

 

 

2 一括払いでもらう場合、贈与税がかかる場合があり得ます

 

一括払いでもらう場合、「必要になる都度(もらう)」の条件をみたさないとして、贈与税の対象になり得ます。

 

もっとも、信託銀行との間で、金銭信託契約を締結して、毎月一定額の均等割給付を受ける方法をとれば、この「必要になる都度(もらう)」という条件を充たせますので、

贈与税はかからなくなります。

 

ただし、当然ながら、信託銀行に対して手数料を支払う必要がございますので、手数料と、贈与税との比較して損得を計算の上、ご利用をご検討ください。

 

 

 

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「離婚届」を妻や夫に勝手に出されてしまったら?

2015.09.11更新

当ブログにようこそ。



渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。

 

今回は、「離婚届」を妻や夫に勝手に出されてしまった場合の効果や、その後の対処法について記載します。

 

 

 

1 離婚届を勝手に出された場合でも、離婚したことになってしまいます

 

離婚届を勝手に出された場合といっても、いろいろな場合があると思います。

 

たとえば、①妻や夫があなたの名前を離婚届に勝手に記載して、役所に提出してしまった場合。

 

あるいは、②突然、離婚を切り出されて動揺のあまり、離婚届に署名して、判子をついてしまった(押印した)けれども、冷静になってよく考えたら、やっぱり離婚したくないので、「離婚届の話はなかったことにして欲しい。」と言ったのに、勝手に出されてしまった場合

 

この②確かに離婚届に一度は署名、押印したけれど後になってやっぱりやめようとしたのに、勝手に離婚届をだされてしまったパターンとしては、さきほどの「突然の事態に動揺して」とか「頭が真っ白になって言われるままに行動してしまった」場合の他にも、「あまりに強引、執拗に相手から離婚届への署名、押印を求められたので怖くなって署名、押印してしまった」という場合もあります。

 

このうち、①の勝手に書かれた離婚届を役所に提出されても、離婚したことにはならないのではないか?とか、

 

②のうちでも、執拗に迫られて書かされた離婚届を勝手に役所に出された場合なら、離婚したことにはならないのではないか?

 

と、思われてらっしゃいませんか?

 

しかし、これら勝手に離婚届を出された全ての場合において、離婚したことになります。

 

これは、離婚届を受理する役所には、離婚届がご夫婦の真実の合意により作成、提出されたものであるかについて審査する権限がない(法律がその権限を付与していない)ため、離婚届に記載ミスや記入漏れがないかどうかしか審査できず、それらがなければ受理して、法律上は離婚したことになってしまうからです。

 

このような事態を防止するには、離婚届を勝手に出されそうになったら、「不受理申出」というのをお住まいの地域または本籍地の市区町村役場に提出してください。

 

「不受理申出」の点について詳しくは以下の記事をご覧ください。

 

「離婚に応じたくないのですが、相手が勝手に離婚届を出してしまいそうなのですがどうしたらよいでしょうか?」

 

 

2 勝手に離婚届が出されてしまった後の対処法

 

では、不受理申出が間に合わなかった等の理由で、勝手に離婚届が提出されてしまった場合、どうすれば良いのでしょうか?

 

この場合は、離婚無効確認の訴えという裁判を起こさなければなりません。

 

といいますのも、まず、先述のように、役所には離婚届の提出に関して真実の合意があったか等について審査する権限がないので、役所にいくら要求しても、役所ははそもそも事後的に是正することも出来ないのです。

 

このため、「離婚無効確認の訴え」により、その離婚届が真実の離婚意思によらずして提出されたものであり、離婚が無効であること、したがって今に至るまでずっと婚姻が継続していることを裁判で確定する必要があるのです。

 

 

 

3 相手に対する制裁についてはご注意ください

 

このような勝手なことをする相手に対しては、制裁を加えたいと思われる方も多いでしょう。

 

制裁とは、たとえば、相手に対する刑事告訴、損害賠償の裁判などです。

 

しかし、この制裁についてはご注意ください。

 

といいますのも、こうした相手に対する刑事告訴、裁判の提起などをした場合、「夫婦の一方が他方に対してそのような行為におよぶとすれば、その夫婦は実際には破綻している。」と評価され、それゆえ離婚原因である「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があると判断され、それを理由に離婚が認めてしまうことがあるのです。

 

むろん、さきほどから記載しておりますように、①勝手に離婚届に署名、押印して役所に提出した相手に対して、離婚無効確認の訴訟を提起することは許されます。

 

また、この訴訟を提起したとしても、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があると判断されること(これを理由に離婚が認められてしまうこと)はありませんので、ご安心ください。

 

(離婚したくないから離婚無効の確認訴訟を起こしたのに、訴訟を起こしたことが原因で離婚が認められてしまったのでは大変です)

 

このように、自身の権利を守るためには夫婦の一方が他方に対して訴訟することもやむを得なかったような場合であれば、訴訟をしても「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」とはならない(その訴訟を起こしたこと等を原因とする離婚は認められない)のです。

 

ただし、こうした自身の権利を守るためにはやむをえない場合ではなく、夫婦なので話し合いで解決すればよく、訴訟まではしなくとも良かったのではないかというのときに訴訟を起こした場合には、それをもって「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとされえます。

 

 

同様に、何もそこまでしなくともという刑事告訴をしてしまった場合には、それをもって「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとされえます。

 

事実、①妻に勝手に離婚届に署名、押印され、役所に提出もされた夫が、このような勝手に離婚届を出した妻に対して離婚無効確認の訴訟を起こし、無効が確認された後(この無効確認訴訟の勝訴により、ご夫婦は、法律上離婚はなかったという扱いになっています。)、さらにすすんで刑事告訴までしてしまった場合に、この「刑事告訴をした」点をとらえて、そのような行為をするということはもはや配偶者とは認めないということであるとして、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして、離婚が認められてしまったのです(東京地方裁判所平成4年6月26日判決。事件番号:平成3年(タ)518号)。

 

つまり、勝手に離婚届を出した妻との離婚無効の確認訴訟に勝ち、そのままいけば今後ずっと夫婦でいられたはずなのに、刑事告訴をしたことで、夫は、結局離婚しなければならなくなってしまったのです。

 

この点についてもお気をつけください。

 

 

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姑(夫の親族)との関係がうまくいっていないことを理由に離婚できるのか?

2015.09.09更新

当ブログにようこそ。

 

渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。

 

今回は、「姑(夫の親族)との関係がうまくいっていないことを理由に離婚できるのか?」について記載します。

 

同居している姑あるいは小姑、さらには別居しているけれども何かと干渉してくる姑、小姑との関係がうまくいっていないといった、夫の親族とうまくいっていないという話は、よく聞かれるところです。

 

では、こうした同居している、していないを問わず、姑、あるいは小姑といった夫の親族との関係がうまくいっていないことを理由に離婚できるのでしょうか?

 

 

1 夫の親族との関係がうまくいっていないことだけを理由に、離婚することは出来ません

 

そもそも、合意によらずして裁判で離婚するには、法律上「離婚原因」と呼ばれるものが必要です。

 

そして、夫の親族との関係がうまくいっていないことは、離婚原因のうち、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条1項5号)に該当する可能性があるにはあります。

 

しかし、それだけでは、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」(「婚姻を継続しがたい」上に、「重大な事由」である点にご注意ください)には該当しません。

 

 

2  「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当しない可能性がある理由

 

まず、そもそも離婚原因である「婚姻を継続しがたい」場合であるといえるためには、婚姻関係が破綻していることが必要です。

 

夫の親族(旦那様の親族)との関係がうまくいっていない、特にその親族とは別居中の場合、ご夫婦の婚姻関係とは直接関係しないため、婚姻関係が破綻しているとは言いがたい場合も少なからず存在いたします。

 

とはいえ、たとえば、夫の親族がご夫婦の生活等にあまりにも過度に干渉してくる場合などで、そのためにご夫婦の婚姻関係も悪化し、婚姻関係の破綻と評価される場合もあるでしょう。

 

ただし、それでも、元々あくまで夫の親族との関係で生じた問題でありご夫婦自体の問題ではないとして、夫が何らかの対応をとるなどして、夫の親族との問題が解決可能と判断されることもあり得ます。

 

このように、解決可能(夫婦の婚姻関係が修復可能)と判断された場合も、 「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当しないとして、離婚が認められません。 

 

 

 

3 夫(旦那様)の対応が重要です(奥様が姑、小姑との関係で困っていらっしゃるのに適切な対応をとってくれない夫が問題です)

 

ところで、ここまでお読みになっていただいて、「確かに、夫の親族(旦那様の親族)との関係がうまくいっていないことは、私たち夫婦の間とは直接関係しないことかもしれないけれども、そこで夫(旦那様)が何もしないことが問題。」というように思われる方も少なくないと存じます。

 

実は、この「夫の親族との関係がうまくいっていないことを理由に離婚できるか」という問題において、重要なこともその点にあります。

 

すなわち、妻が夫の親族との関係でうまくいっていないことに対して、夫がなんら適切な対応をしない、あるいは不十分な対応しかしないことにより、ご夫婦がうまくいかなくなり、その状態こそが「婚姻関係の破綻」とされ、さらにはこれまで問題に対して適切な対応をとってこなかった夫の不誠実な対応についても「これまでの対応を見る限り、たとえ口では努力するだのなんだと言っていても、それを本当に実践するかどうか疑わしいから、今後のご夫婦の婚姻関係破綻を修復できないだろう。」と裁判所に判断され、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当し、離婚できることになるのです。

 

 

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性格の不一致を理由に離婚できるのか?

2015.09.04更新

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渋谷で弁護士をしている上野訓弘です。

 

今回は、「性格の不一致を理由に離婚できるのか?」について記載します。

 

 

1 簡単にはできません

 

性格の不一致というのは、離婚される場合に多く主張される理由であり、このブログを読まれている方も、この理由で離婚したという話を聞かれたことは多いのではないでしょうか。

 

ですから、当然、この理由で離婚できると思ってらっしゃいませんか?

 

もちろん、ご夫婦が、この理由で離婚することに合意されている場合であれば、簡単に離婚できます。

 

しかし、離婚に合意しない場合には、そう簡単にはまいりません。

 

そもそも、合意によらずして裁判で離婚するには、法律上「離婚原因」と呼ばれるものが必要です。

 

そして、性格の不一致は、離婚原因のうち、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」(民法770条1項5号)に該当する可能性があるにはあります。

 

しかし、はっきり申しますと、単に性格が不一致というだけでは、まず「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」(「婚姻を継続しがたい」上に、「重大な事由」である点にご注意ください)には該当しません。

 

 

2 「婚姻を継続しがたい」理由に該当しない理由

 

性格が不一致でも、なんとかやっているご夫婦は世間にいくらでもいらっしゃるということも理由です。

 

ですが、そもそも、「婚姻を継続しがたい」とまでいえるためには、婚姻関係が破綻していることが必要です。

 

性格が不一致で離婚しようとお考えの方の場合、婚姻関係が破綻しているとは言いがたい場合も少なからず存在いたします。

 

また、婚姻関係の破綻の破綻があっても、性格の不一致の場合、双方の歩み寄りも期待できるとして修復可能と判断されてしまうこともあり得ます。 

 

そして、修復可能なと判断される場合、やはり「婚姻を継続しがたい重大な事由」とまでは言えないことになるのです。

 

 

3 ただし、例外もあります

 

当然ですが、修復不可能なほどに婚姻関係が破綻していると裁判所に判断される場合であれば、離婚は認められます。

 

具体的には、修復不可能なほどに婚姻関係が破綻していることをうかがわせる事情(修復不可能なほどに破綻しているかどうかは、別居しているかどうか、夫婦間の生活状況等の様々な事情から総合的に判断されます。)、及びその事情を示す証拠のある場合です。

 

 

なお、離婚を考えていらっしゃる方の中には、ご自身のご家庭がこのような場合に該当するのかどうか、お悩みの方もいらっしゃると思います。

 

これについては、それぞれのご家庭の様々な事情、証拠の状況に応じた専門的な判断となりますので、弁護士にご相談ください。

 

 

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